「冬寄りの春(フユヨリノハル)」

 

 

「冬寄りの春(フユヨリノハル)」

 

 

冬寄りの春の

暖かい朝には

暢気な歌を

冬寄りの春の

麗らかな午後には

悲しい歌を

冬寄りの春の

明るみを増した夜には

気持ちのいい歌を

冬寄りの春の

凍えない夜には

のどかな歌を

 

 

「宇宙」

 

 

「宇宙」

 

 

この宇宙が始まる前に

終わった宇宙があったのだろうか

終わった宇宙の後に

始まる宇宙があるのならば

私のいる、この宇宙は

何回目に終わったのだろう

何回目に始まったのだろう

いずれ終わるのだろうか

この宇宙も

終わっては始まって

始まっては終わって

そして

また始まるのだろうか

この宇宙は

何回終わっても

何回でも始まり続けるのだろうか

 

 

「逃げるということ」

 

 

「逃げるということ」

 

 

逃げるのは空しい

逃げるのは居心地が悪い

逃げるのは惨めだ

逃げるのは簡単だと言う者がいる

誰にでも逃げ場所があるのだと

だから逃げるのだと思っている

逃げるのは簡単なことじゃない

逃げるには逃げ場所がなければならない

行き先の分からない電車に誰が乗る

それでも逃げなければならない時はある

逃げ場所もないのに逃げなければならない時はあるんだ

だから逃げる先から次の行動を始めなければならない

逃げとは次の始まりなんだ

空しいと感じても空しいことではないし

居心地が悪いのは気のせいだし

惨めだと思うのなら次に賭けろ

もう始まっているんだ

 

 

「居場所」

 

 

「居場所」

 

 

常に居場所を探している

自分の居場所はどこかと

それはどこかにありそうで

だから探すのに

それはどこにもないと

心のどこかで感じている

ここが自分の居場所だと

言うのは簡単なことだけど

そこに疑問を感じないのは

その場所に満足しているからだろう

居場所とは自分で作るものなのか

どこにいても不安という限界が付きまとう

ここにいていいのかという不安

このままではいられないという不安

常に居場所を探している

心が居場所を探している

 

 

「強い、風」

 

 

「強い、風」

 

 

冬の夜 曇り空 風

枯れ木のざわめき 葉ずれ 強い、風

不吉な風 雲の流れ

漣立つ川面

カタカタ揺れる墓の卒塔婆 死者の笑い

交差点を横切る小さな黒猫

走り去った道に姿は見えず

辺りを見渡す 不穏な空気 強い、風

不吉な不吉な 強い、風

 

 

「歌おう」

 

 

「歌おう」

 

 

歌おう 歌おう

生きてる意味を

歌おう 歌おう

ここにいる意味を


どうして この世は

こんなにも苦しい

泣いても 泣いても

もう戻せない

だから


歌おう 歌おう

生きてる意味を

歌おう 歌おう

ここにいる意味を


歌おう 歌おう

思い出を

あの日々を

歌おう

 

 

「本当ノ処(ホントウノトコロ)」

 

 

「本当ノ処(ホントウノトコロ)」

 

 

他人だからわからないんじゃなくて

わからないから他人なんだ


仕事がつまらないんじゃなくて

つまらないから仕事なんだ

 
人生がつらいんじゃなくて

つらいから人生なんだ


望むものを得ることが

幸せだろうか

本当に?


見たいものを見ることが

幸せだろうか

本当に?


食べたいものを食べることが

幸せだろうか

本当に?


満足することが

幸せだろうか

 

本当に?

 

 

「野良猫の死」

 

 

「野良猫の死」

 

 

野良猫が死んでいた

秋の枯れ葉に包まれ 道の端で

静かに横たわっていた


一目で 死んでいると

脳が理解する

なぜだろう 死はすぐに分かる

重力に逆らっていないことが 分かるからだろうか


あの猫は 最後に何を見たのだろう


何を見て 重力から解放されたのだろう

 

 

「霞み」

 

 

「霞み」

 

 

今日も

この夜空と

電線の網を

見上げながら

道を歩く


汚れたレンズで

街灯を見れば

万華鏡のような

幻想世界

眼鏡を外した

先にある

乱視の世界は

とても綺麗だ


遠くの景色は

輪郭がぼやけ

街頭の光は

結晶のように

形を成す

信号の光も

看板の文字も

車のテールランプも

人の顔も

見たいことも

見たくないことも

はっきり見えなくなる


だから

眩しくて

だから

綺麗に見える


淀んだ瞳が

映す夜空

淀んだ瞳が

映す

夜を

内包した

窓ガラスの

向こう側

嫉妬にまみれた

夢の


今は

うつつか

夢の

つづきか

気ままに瞬く

目映い星

街の水温は

生ぬるい

きれいなレンズに

映るのは

汚れた

現想世界だ


それでは

みなさん

おやすみなさい