「自分と時間」

 

 

「自分と時間」

 


無限に続き、無限に広がる階段

その果てしない階段に並ぶのは

生まれてから死ぬまでの、すべての瞬間の自分

赤ん坊だった自分と、魂が消えるまでの自分

過去から未来に続いていく、連続した自分

そのどれもが自分

今この瞬間、未来も過去も同時に存在している

今この瞬間、未来も過去も同時に存在している

今の自分が、一段上の自分になるわけではない

階段に居る、すべての瞬間の自分の

ある一瞬に、ふと気付くだけ

階段に居る自分に、ふと気付くだけ

自分に気付かない赤ん坊は

すべての瞬間の自分が見えている

階段の途中にいる、連続した自分

それが自分だと気付かないままに

だから泣いたり、笑ったりするんだ

階段に並ぶ、色んな自分を見ながら

泣いたり、笑ったりするんだ

階段の途中に居るということ

自分が、ただ居るということ

そこに意味なんてない

どんな金持ちも、どんな貧乏人も

階段の途中に、ただ居るだけ

無限に比べて、一瞬でしかない長さ

そんな階段の途中に、ただ居るだけ

だから、意味を探すんだ

その瞬間に、その位置に

自分が居るということ

その意味を、探すんだ

 

 

「少年と深海生物」

 

 

「少年と深海生物」

 


ある少年は、

「世界よ壊れろ」

と思いながら生きている。

そんな少年にはたった一つ、奇妙な能力がある。

それは、世界を壊せる深海生物に、「世界を壊せ」と命令できること。

少年はそのことを知らない。

見たこともない深海生物に興味もない。

その生物は少年の命令を待ちながら、悠々とプランクトンを食べている。

やがて少年は大人になり、愛を知る。

「壊れるな世界」

と願う。

深海生物はそのことを知らない。

見たこともない人間に興味もない。

今日もプランクトンを食べている。

 

 

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「no_title」

 

 

一つ片付けることは

一つ答えを出すこと

 


/ ※ /
 

 

未来はそれほど

ミライになっていないらしい

 


/ ※ /
 

 

少しズレれば

世界はかわる

 


/ ※ /
 

 

不便は慣れる

不幸は慣れない

 


/ ※ /
 

 

思い出が

自分を作っている

 


/ ※ /
 

 

私は幸せになりたかったのだ

ただ、私は幸せが分からなかったのだ

だから、そこに幸せがあったことに気付かなかったのだ

幸せだったということに、気付かなかったのだ

 

 

「ヒトの本性」

 

 

「ヒトの本性」

 

 

人間に期待しすぎなんじゃないの

幻想を抱きすぎているんじゃないの

「凶悪犯罪が増えた」

本当に?

人間なんて、最初からそんなものなんじゃないの

理想に目がくらんでいるんじゃないの

残念ながら、人間なんて

ろくでもない生き物なんだ

それを知らずに、いったいどんな理想を持つの

現実を見ない理想の先に、見たい現実はないよ

見たくない現実を見た先に、理想は生まれるんだよ

理想と現実の順番を

まちがえちゃいけないよ

 

 

「或る、八月の日」

 

 

「或る、八月の日」

 

 

まとわりつく湿った空気

木陰にゆれる猫じゃらし

聞こえてくるピアノの音

見つめてくる猫の眼差し


夕立ちに降られ大粒の

雨滴の彼方に青い空

どこから降るのか見渡せば

後ろの空に灰の雲

雷鳴、轟き

雷光、瞬く

ひどく降る雨の中

蝉は鳴き続ける

濡れない場所にとまっているのか

鳴きやむつもりはないらしい

雷、雨、蝉に

ひどく騒がしい

どれかやめばいいものを

音に支配され雨宿るうち

夕立ちは静かに上がっていった

雷は遠くに移ったらしい

蝉は鳴くのをやめていない


向かう先に雲はない

蝉はひどく騒がしい

 

 

「願わくば」

 

 

「願わくば」

 

 

降ってきますように

この雪のように

掌に乗った結晶の形も

消えてしまいませぬように


叶えられぬと知りながら

そこに永遠があると信じていたく

解けてしまうと知りながら

消えてしまいませぬように


体温で結晶の形は崩れてしまい

跡には水が残ります

掌を伝い皺を流れて

地に積もった雪の中へ

ぽつりと落ちます


そしてまた

水の通った掌に

いくつも雪が降ってきます


解けてしまうと知りながら

消えてしまいませぬように

叶えられぬと知りながら

そこに永遠があると信じていたく


願わくば

そこに永遠がありますよう

 

 

「サイカイ」

 

 

「サイカイ」

 

 

最下位を知る人間は強い

這い上がれることを知っているからだ

最下位を知る人間は強い

落ちても死なないことを知っているからだ

最下位を走る人間は

遠ざかる背中を見ながら、走り続けなければならない

後ろに誰もいない中で、走り続けなければならない

最下位を走る人間は

死んでしまいたいほどの孤独の中で

同情にまみれながら、走り続けなければならない

最下位を知る人間は強い

自分が非力なことを知っているからだ

だから

最下位を知る人間は強い

いくらでも強くなれるから

 

 

「木」

 

 

「木」

 

 

人は皆、人類という木に生を受ける

葉として、果実として、あるいは樹皮として

木の一部と成る

瑞々しく、生を全うするそれらは

雨に打たれ、風に吹かれ、あるいは雪に降られて

いつの日か脱落する

一度、木を離れたものは

風に舞い、土に溶け、あるいは鳥についばまれ

同じ生を受けることはない

木は、刻一刻と変わり続け

新しい生を、生み続ける

人類という、その木は

 

 

「道」

 

 

「道」

 

 

風が吹き抜け

髪をなびかせながら

過去から今

今から未来へ続く道に立ち

私はどちらを向けばいい

足の裏を傷だらけにしながら

歩いてきた道を振り返るのか

歩いていく道を見つめるのか


風が吹き抜けていく

 

 

「錨」

 

 

「錨」

 

 

重たい錨を下ろそう

流されないように、失わないように


人はいつか死ぬ

隣に立つ、その人も

腕に抱く、その人も


だから、重たい錨を下ろそう

流されないように、失わないように


その舟は、簡単に壊れない

荒波に呑まれ、沈んでしまっても

いつか、浮かび上がってくる

いつか、そこに戻ってくる


だから、重たい錨を下ろそう

流されないように、失わないように

いつでもそこに、舟があるように