2014
【秋 三編】
軒先に静かに咲く彼岸花
Lycoris
しとやかな楓の木も今ばかり
身を燃やさんと紅く色づく
Acer
夕焼けや天も地もなくただ赤く
SUNSET
(2014年11月4日(火))
【初秋 四編】
鳴き残るヒグラシの羽の音
T.japonensis
秋の風に青空に雲の流れに影に我が息遣いに
flowing
雨後の青き中を歩きたる秋
a blue air,
夕紅葉空の果てまで赤き海
and a red world
(2014年10月7日(火))
【晩夏 七編】
樹の洞に底なしの命見る
KINO URONI / SOKONASHINO / INOCHI MIRU
鳥の羽や緑の中を落ちてくる
A FEATHER
黒き実にトンボ誘うヤブミョウガ
KUROKIMINI / TONBOIZANAU / YABUMYOUGA
風揺るるサンゴシトウの赤つぼみ
A RED BUD
蝉殻の雨に寒く夏の朝
SENKAKUNO / AMENISAMUKU / NATSUNOASA
水青く緑濃きかな雨後の園
BLUE BLUE RAIN
セミ遠く朱に染まるなり雲の峰
CUMULUS/NIMBUS
(2014年9月8日(月))
【夏 十編】
すだれと青空 夏
BAMBOO BLIND, BLUE
ふりはやみふりはやみて朝顔の
ツルの巻くさき水伝う
MORNING GLORY
夏の陽にしづかに今もプラタナス
OLD PLATANUS
夏空に染井の木も軽やかに
SOMEI
雨の間に可愛らしきひつじ草
HITSUJIGUSA
風に乗り腕に乗る小蟻かな
SMALL TRIP
梅雨明けにヤマモモの葉の身の軽さ
BAYBERRY
青空にせみの一声夏がくる
FIRST SHRILL
ハルニレの太き株に蝶とまる
JAPANESE ELM
黐の花帽子の上に咲かすかな
MOCHINOHANA / BOUSHINO UENI / SAKASUKANA
(2014年7月15日(火))
【梅雨 八編】
雷鳴にぬっと飛びおき送り梅雨
"THUNDER!"
夏小道アオに染める若楓
BLUE PATH, SUMMER
路地裏に紫煙揺れる梅雨の朝
SMOKIN' RAIN
紫陽花のほくろのごとき小蟻かな
SMALL ANT
五月雨や孤独な音の満ちる日々
RAIN = TEARS
水たまり青と白の水たまり
BLUE AND WHITE
姫女苑けなげに咲いて夏来る
ERIGERON ANNUUS
春紫苑姫女苑額紫陽花
IASIJAUKAGNOOJEMIHNOIJURAH
(2014年06月29日(日))
【春 五編】
春陰にたんぽぽ綿毛の揺れる朝
fluff
おさな子の小さき足に靴履かす
母の背に春の陽は差す
in a sunny day
影絵の中で遊ぶかな夕暮れの街や劇場となりぬ
shadow picture
蝶が舞いコート重たき白つつじ
white azalea
錦鯉 花筏をゆらすかな
nishikigoi / hanaikadawo yurasukana
(2014年5月12日(月))
【春 九編】
走り去るバスの音さえ春陽気
"brororo…"
ホットケーキとコーヒー 春
maple & butter
ben folds fiveと春風と
"philosophy"
春宵に解き放たれし満月夜
full moon
夕闇に花の香る春の宵
perfume
たおやかな小雨の中のツツジ花
azalea
花ちるや走り出す背に恋をする
a shower of blossoms
花筏カエルの子も花見かな
tadpoles
紅梅の花弁伝ふ朝露に
やがて来る春は映りし
beniumeno / hanatsutau / asatsuyuni
/ yagatekitaru / haruha utsurishi
(2014年4月20日(日))
『春 九編』
砂糖きらめく春日向
sugar
幼な子のあしあと消えし春の浜
spring beach
夜桜のこっちという声がする
"I'm here."
こぶしの庭に咲きたるを
夢に見ながら冬の陽の中
in a sunny place
春はじめ澄んだ空に花こぶし
magnolia kobus
夢の野を転がり落ちぬ紅椿
in a dream
鼻唄の向こう側に桜咲く
humming a song
ラブリースプリング桜色
spring, cherry, color
桜落ちはらりはらりと春
fluttering petals
(2014年4月27日(日))
『no_title』
飯食いながら津波見る吾等
吾身やとうに風化せん
the person
空は遠いいから青いのだ
blue, blue
溶け去る時間の行方や我知らず
a lapse of time
(2014年3月31日(月))
『春 六編』
コートの前を開けて春日和
a coat
白雲の巡る先に春あらん
destination of the cloud
黄昏や夕焼け運河の帰り道
in the twilight
風揺るる桜ちょうちん春の宵
a cherry lantern
背に合わぬ荷物を抱え走る子の
足音も花となるかな
an entrance ceremony
春の夜に風の音を聞く
"blowin' in the wind"
(2014年3月31日(月))
『春 四編』
散髪の頭をなでし春の風
haircut
窓際に腰掛け春の空を見ゆ
at the window
横顔にうっすら刷く朧月
a hazy moon
沫雪の春に溶けて消ゆ
awayukino / haruni tokete kiyu
(2014年3月18日(火))
『早春 八編』
春夜の雨の音も咲くかな
haruyono ameno otomosakukana
紅梅やふっくら頬の内裏さま
koubaiya / fukkura hohono / dairisama
雪落ちて映える椿の紅の色
camellia
春初めまんさく散るらん雪の朝
hamamelis
雪しろに魚のはねる川せせら
yukishironi / uono haneru / kawa sesera
流氷の鳥飛びたちて波しぶく
drift ice
白煙り芽吹く大樹の枝細く
shirokeburi / mebuku taijuno / edahosoku
我が空を吹き抜け春風
spring bless
(2014年3月9日(日))
『no_title』
嫉妬をコーヒー流し込む
jealousy
しかたない人は死ぬしかたない
"…"
(2014年2月23日(日))
『水氷 六編』
氷柱のピアノや春の音もするかな
an icicle
氷柱がさっくり落ちてまた冷える
"oh…"
つららから落ちる水に何映る
tsurarakara / ochiru mizuni / naniutsuru
雪合戦させるかな江戸の雪
snowball fight!
冬の川揺らめく水面穏やかに
遠く鳥の鳴く声を聞く
winter river
凍てつく空に川にキリキリと
kiri-kiri
(2014年2月23日(日))
『雪 六編』
いつもより輝けるかな雪の朝
snow morning
流れてはとまる吹雪の呼吸かな
snow bless
雪の日や犬も子も大興奮
"Bow!Wow!"
雪山にあしあとつける親子かな
"It's a small mountain"
東京の雪景色や雨に濡れ
Tokyo sleet
粉雪に電車を人を時を待つ
time being
(2014年2月9日(日),14日(金) 東京大雪の日に)
(2014年2月16日(日))
『no_title』
いつの世も変わらぬかな学舎の
制服の徒や走りまわらん
a school garden
我が心音に生を知る
beating
(2014年2月2日(日))
『冬 三編』
白断の息もできぬ雪しまき
hakudanno / ikimodekinu / yukishimaki
如月の雨の匂いや春近く
kisaragino / amenonioiya / haruchikaku
春風にピンク色のタオルはためく
spring wind
(2014年2月2日(日))
『sea』
どこまでも人を寄せぬ冬の海
dokomademo / hitowoyosenu / fuyunoumi
鰤起し今日もどこかで鳴るのかな
winter thunder
無数の命のあぶく波の花
musuuno / inochino abuku / naminohana
この海の底は見果てぬ別天地
konoumino / sokoha mihatenu / betsutenchi
この海の底は暗く見果てぬも
そこにはたしかに底はある
soko
海の色は色々空の色
color
(2014年2月2日(日))
『冬 六編』
寒雷の布団の向こうに追いやれり
"I'm sleeping…"
ぎゅっぎゅっと歩く雪の上
snow load
霜晴れの引き締まった道をゆく
shimobareno / hikishimatta / michiwoyuku
凍滝のつららの先のひとしずく
itetakino / tsuraranosakino / hitosizuku
春日陰ひっそり霜の花
haruhikage / hissori shimonohana
一月の冬眠る小春日に
猫がのびてあくびする
a cat's yawn
(2014年1月28日(火))
『no_title』
あの時の言葉の意味を今解す
I'm still a boy
通い路も5分遅れの別世界
five minutes later
一人句を編む喫茶にて
孤独はいつもそこにある
people
人類のガイア理論片思い
"James Lovelock"
(2014年1月13日(月))
『冬 十一編』
積もらぬと知るも淡き江戸の華
Tokyo snow
曇り日にカラスの黒や遠ざかり
dark and gray
小春日の今がこの世の春である
koharubino / imagakonoyono / harudearu
もそもそと芋虫の眠る朝
caterpillar
初雪の両手を伸ばす冬の窓
hatsuyukino / ryoutewo nobasu / fuyunomado
初雪に両手を差し出す冬の朝
hatsuyukini / ryoutewo sashidasu / fuyunoasa
散り際の一葉落ちる刻を待つ
a last leaf
枯れ原に立つ背を遠く見ゆ
karebarani / tatsusewo tookumiyu
枯れ草の風に匂わじ冬の野を
駆け回るらん過ぎ去りし日
winter field
夢の転がる枯野かな
yumeno korogaru karenokana
雨上がる冬の朝に春を見ゆ
morning after rain
(2014年1月13日(月))
門松も人も倒る三が日
"HAPPY NEW YEAR!"
(2014年1月5日(日))
2016年8月26日(金)公開